クラウ母:「真面目で一生懸命だし、家事もできる……」
クラウ母:「いつの間にか、ティオ君ってばすごくお買い得な男の子に育ってたのね〜」

お買い得って……

クラウ母:「こんなことなら、もっと早いうちにお婿さんに来てもらえばよかったわ」
ティオ:「ぶっ!」

婿!?

クラウ:「お、お母さんっ!? そのことは!」
クラウ母:「ねえ、ティオ君、いまからでもどうかしら?」
ティオ:「ど、どうかしらって……ええ!?」
クラウ母:「いろいろあってうやむやになってしまっていたけれど……」
クラウ母:「うちとしては、クラウとの婚約を破棄したつもりはないのよ?」

全 員:「!!!!!」

い、いまなんか凄い単語が耳に飛びこんできた気が……
婚約?
破棄?

クラウ:「お母さんっ、こんなところでなんて話をするのよっ!」
クラウ母:「あら、どうせみんな知ってることじゃないの」
クラウと、クラウの所のおばさん以外の全員が、一斉に首を横に振る。
クラウ母:「あら? みなさん、知らなかったのかしら?」

これまた全員が首を縦に振る。

クラウ母:「ティオ君のご両親が生きてた頃に、ウチとそんな約束をしてたのよ」
クラウ母:「てっきり、ティオ君がみなさんにその話をしてるかと思ったのだけれど?」

俺?

ライカ:「ちょっと、ティオ! それホントなの!?」
リミア:「聞いていないぞ、ワタシは!」

すぐさま、ライカとリミアの2人が俺に詰め寄ってくる。
そんな、俺だってまったく記憶に……ん? いや、待てよ。

ティオ:「あの、おばさん」
クラウ母:「なにかしら?」
ティオ:「うちの両親が生きてたころ、酒の席でおばさんたちがそんなような話をしていたような記憶が微かにあるんだけど……」
ティオ:「まさか、あれ、本気だったの?」
クラウ母:「ええ」
ティオ:「なにいいいいいっ!?」
ティオ:「で、でもみんな酔っぱらってたし! 冗談じゃなかったの!?」
クラウ母:「冗談だなんて。たとえお酒の席でも、商売人の交わした約束にウソ偽りがあってはいけないわ」
ティオ:「えええええっ!?」
クラウ:「……もしかして、ずっと忘れてたの?」
ティオ:「く、クラウ……」
クラウ:「ミドルスクールで再会したときに、忘れてるみたいだとは思ったけど」
クラウ:「本当に、今の今までキレイさっぱり忘れてたの?」
ティオ:「いや、だから、忘れてたって言うか、本気だとは思ってなくて……」
クラウ:「忘れてたんでしょう!」
ティオ:「は、はい……忘れてました」
クラウ:「信じられないわ……」

クラウが目を見開き、そして俺を睨み付ける。
思い出した。
ミドルスクールで再会した初日にこうやって思いっきり睨まれたっけ。

ティオ:「ああ、そうか、それでか」
クラウ:「なにがよっ」
ティオ:「勝手に好きでもない男の許嫁なんかにさせられて嫌だったんだろ?」
ティオ:「だから、俺のこと恨んでたんじゃないのか?」
クラウ:「……っ!!!」

 


       

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